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新聞/出版/マスコミ 国立障害者リハビリテーションセンター研究所 2012年02月06日


【プレスリリース概要】
国立障害者リハビリテーションセンター(国リハ)研究所の岩波将輝研究員(国リハ病院眼科医師併任)と加藤誠志研究所長らの研究チームは、視覚障害者の多くが罹患している網膜色素変性症の主要な原因遺伝子を突きとめ、米国の眼科学雑誌に発表しました。国リハ病院眼科に来院した68名の網膜色素変性症患者についてEYS遺伝子の変異探索を行った結果、2種類の創始者変異を見いだし、常染色体劣性遺伝の日本人網膜色素変性症患者の約3分の1がこれら2種類の変異のどちらかを有していることを明らかにしました。これらの成果は、今後網膜色素変性症の遺伝子診断や治療法開発へつながるものとして期待されます。

【プレスリリース内容】
(1)日本人特有の病因変異を発見
 国リハ病院眼科に来院した68名の網膜色素変性症患者の血液から白血球ゲノムDNAを調製し、網膜色素変性症の原因遺伝子の一つとして最近欧州で報告されたEYS遺伝子の変異探索を行った結果、常染色体劣性遺伝の網膜色素変性症患者の約3分の1において日本人特有の変異を有していることを見いだしました。今回7種類の新しい変異を見つけましたが、そのうち二つの変異(M1とM2)は、それぞれ16名と5名、合わせて21名の患者に見られました。

中略

(4)今後の展望
 今回の解析結果から、EYS遺伝子の変異が原因で網膜色素変性症に罹患している患者の数は、およそ1万人以上と推定されます。引き続き当施設では、対象患者数を増やして変異解析を実施し、日本人網膜色素変性症患者のEYS遺伝子の変異の全貌を明らかにしていきます。特に、当センター病院では病気の経過に関するデータを多く持っていますので、これを用いることによって、変異の型と病気の進行との間に相関があるかどうか、詳細な解析を進めていきます。このことは、遺伝型を検査することによって、病気予後の診断が可能になることを意味しています。予後診断の結果は、網膜色素変性症患者の支援を行う上で有用です。将来的には、今回見いだされたEYS遺伝子の変異によって引き起こされる網膜細胞変性のメカニズムを解明し、患者個人に適した遺伝子治療の実現、そして急速に進歩するiPS細胞に代表される再生医学の技術を駆使することで治療法の開発につなげたいと考えています。


3.発表論文 Iwanami et al.,High Prevalence of Mutations in the EYS gen in Japanese Patients with Autosomal Recessive Retinitis Pigmentosa. Investigative Ophthalmology and Visual Science,2012 Feb 2.[Epub ahead of print] http://www.iovs.org/content/early/2012/01/19/iovs.11-9048.abstract

【プレスリリース連絡先】
国立障害者リハビリテーションセンター
【照会先】
 国立障害者リハビリテーションセンター研究所
 研究所長 加藤誠志
   〒359-8555 埼玉県所沢市並木4-1
 電話番号:04-2995-3100(内線2500)
 FAX番号:04-2995-3132
【取材申込みについて】
 管理部企画課 企画係長 罍(もたい) 準
 電話番号:04-2995-3100(内2147)
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