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医療/医薬/介護 ABI PR 2010年03月31日


【プレスリリース概要】
導電率は、サンプル内の溶存物質の濃度を測定するためにしばしば使用される、シンプルでコスト効果の高い方法です。 導電率の測定は、一見、簡単に思えます。メソッドに使用されるパラメーターは複雑ではありませんが、サンプルの種類によって大きく変化します。この論文は、最も重要なパラメーターや、導電率の測定精度を増加させるために有益なさまざまな事項について説明しています。

【プレスリリース内容】
セルとセル定数の測定

ベーシックな伝導率セルは、間にサンプルの存在する電極のペアによって構成されています。電極 (d) とその表面積 (A) 間の距離率が、セル定数 K となります。

K = d/A [cm-1]

伝導率 κ [S • cm-1] は、セル定数 [cm-1] に伝導性 G [S] を乗じることによって得られます。

すべての測定セルは、独自のセル定数を有しています。不均質な境界効果の発生は、セル定数がセルの寸法からは単純に計算できないことを意味しています。これは、(既知の伝導率)の標準溶剤による校正を通じて実験的に測定され、調整された上で伝導率メーターに保存されます。

現在、いくつかのセンサは認証を受けたセル定数とともに提供され、ユーザーは事前に値を測定する必要なくして、伝導率メーターにセル定数を入力することができます。しかし、生産上の理由によって大きく変化する名目的なセル定数ではなく、認証されたセル定数であることを十分に知っておくことが重要です。

最も正確な結果を得るため、基準を使用してセル定数を測定することが推奨されます。そして、攪拌速度や CO2 の影響など、特定の測定状態を考慮に入れます。

pH 電極とは対照的に、適切に使用された高品質センサの場合には特に、測定セルは時間によって変化しません例えば指紋、沈殿物、傷、混入した気泡などにより、セル定数は、電極の表面が変化した場合にのみ、セル定数は変化します。センサが汚染された場合、エタノール、適切な洗剤や溶剤で、可能であれば超音速バスにより洗浄する必要があります。グラファイト、プラチナ、鉄鋼によって製造されたセンサは、柔らかいブラシで注意深く機械洗浄することができます。もちろん、洗浄中にセンサの表面を損傷しないことが極めて重要です。最後に、センサを脱イオン化水によってすすぎ、洗浄が完了した後、乾燥した場所に保管します。

電極の表面に発生する気泡はエラーを良く生じさせる原因ですが、これは十分に認識されていません。サンプルを攪拌して、必要であればタッピングして、泡を除去します。気泡の除去は、導電率の急激な上昇として観察できます。
測定精度は校正によっているため、最新の基準を常に使用しなければいけません。汚染の存在は伝導率の結果にエラーを発生させるため、サンプルのビーカーとセンサをサンプルで2~3回洗浄することが理想的です。

一般的には、電極の表面を溶剤に完全に浸す必要があります。希釈の影響は線形ではないので、導電率サンプルと基準溶剤を希釈することはできません。

測定ビーカーにおけるセンサ位置は、(電極表面の外側における境界効果の発生により)結果に影響を与えることがあります。これはもちろん、電極の設計によっていますが、通常はセンサを中央に置くことが最善です。純水において生じる低い導電率は、フローセル内で測定する必要があります。この理由は、水に溶存して炭酸を形成している気体中のCO2であり、導電率の結果にエラーを生じさせます。
最後の推奨事項は校正と測定の両方に適用されます。フローセルの使用は、サンプルが空気と接触するのを防ぎますが、フローセルとチューブは使用前に十分に洗浄する必要があります。

参照温度

導電率の測定は、温度が高ければ導電率も高くなるというように、温度に依存しています。例えば、0.01 モルの塩化カリウム溶剤では、20°C における導電率は 1278μS • cm-1 ですが、25°C では導電率は 1413μS • cm-1 です。つまり、同じサンプルに違う温度で行われた測定では、感覚的に比較をすることができないのです。参照温度の利用は、まさにこうした理由で導入されました。通常、20°C か 25°C です。

一般的に、導電率の測定は以下のように行われます。

導電率メーターは、一定の温度(例えば 27°C)で実際の導電率(例えば 1000μS • cm-1)を測定し、温度定数(例えば α = 2%/°C)を使用して、測定値を求める参照温度(例えば 25°C)に変換します。この例では、25°C の参照温度で表示される結果は 962μS • cm-1 となります。

導電率の測定のための温度補償は、pH 測定における温度補償と混同してはいけません。導電率測定では、表示された導電率の値は求める参照温度において計算された導電率であり、pH 測定では実際温度(例えば 27°C)が表示されますここでは、温度補償は、温度によって pH 電極の傾きへの適応を伴います。

一般的に、導電率の結果は 25°C の参照温度において記録されます。参照温度がメーターにおいて 20°C に設定されている場合、参照温度が 25°C の場合とは異なった結果が当然のように得られます。これはエラーや間違いとは関係がありません。単純に、結果は異なる参照温度に関連づけられています。つまり、測定と参照温度は、導電率の測定結果と一緒に記録される必要があります。

温度補償

測定された導電率は導電率測定における参照温度の値に変換されるため、測定サンプルの温度依存(導電率/°C の傾き)を知っておくことが重要です。実際、あらゆるサンプルにおいて、温度依存は異なっています。基本的に、温度が高ければ、導電率も高くなります。増加する温度による導電率の傾きは、残念ながら、直線上ではありません。温度が高ければ高いほど、イオンの運動性の増加率は低くなります(図1を参照)。温度とは別に、サンプルの濃度も重要な要因です。サンプルの化学的濃度が高ければ、温度ごとの導電率の増加率も低くなるからです。この理由は、人間が人混みの中をかきわけて進もうとするように、イオンが電極表面への道を見つけるというイメージによって説明できます。そのため、サンプルは完全に異なった温度依存を、異なった温度と濃度において示します。

以下の温度補償メソッドを使用します:

• 直線的(温度定数 α)
• 自然水で非直線的
• USP に従った修正なし


中間から高い効果を有する溶剤については、一次方程式を温度補償に使用することができます。反対に、自然水では、温度依存は力強い非直線的であり、非直線的補償を使用する必要があります。これに対して、USP (合衆国薬局方)は、温度補償メソッドを禁止しており、非補償伝導率測定を定めています。

サンプル間の大きな温度差により、測定を行う前に1-2分はセンサをサンプルに漬ける必要があります。いくつかの内蔵型センサは、他よりも温度変化に対する反応が遅いからです。サンプルは、測定精度を最大にするため、選択した参照温度にて温度調整する必要があります。この場合、温度補償は行われず、補償エラーによる間違いの可能性も生じません。

【プレスリリース連絡先】
Mettler-Toledo AG
Laboratory Division
Im Langacher
CH-8606 Greifensee, Switzerland